研究グループ

不育症・習慣流産のみなさんへ

子宮形態異常

手術をすると出産できるようになるというのは証明されていません。

子宮形態異常のスクリーニングのために4D超音波検査を行います。出産歴がない場合、回数が多い場合は子宮卵管造影も行います(写真22)。双角子宮、中隔子宮、単角子宮、重複子宮などの先天性子宮大奇形は習慣流産、子宮内胎児死亡、早産、骨盤位の原因になります。私たちの1676例の検討ではこれらの子宮形態異常は3.2%にみられました(文献5)。双角子宮と中隔子宮の鑑別のため、MRIを行います。弓状子宮は流産の原因とは考えられていません。

図22:子宮奇形の分類

子宮奇形の分類

中隔子宮もしくは双角子宮

2013年に発表された欧州生殖医学会/欧州内視鏡学会の診断基準が臨床的に有用です(文献2)。
子宮の外側が平滑であれば中隔子宮であり、子宮鏡下中隔切除術が行われ、子宮底部がくぼんでいれば双角子宮であり、形成手術が行われてきました。実は手術をしなかったらどうなるかという視点の研究はありませんでした。そこで私たちは子宮形態異常が診断された患者さんの手術をしない自然妊娠帰結を世界で初めて報告しました(文献5)。子宮形態異常(中隔子宮、双角子宮)をもつ人と正常子宮をもつ人の診断後初回妊娠出産率は59.5%(25/42),71.7%(1096/1528,p=0.084)、累積出産率は78%, 85.5%であり、子宮形態異常を持つ人の出産率が低い傾向にありました(表23)。胎児染色体異常率はそれぞれ子宮奇形群15.4%(2/13)、正常子宮群 57.5% (134/233,p=0.006)であり、子宮形態異常を持つ患者さんは胎児染色体正常流産を起こすことが証明されました。つまり、子宮形態異常は不育症の原因なのです。また、欠損部分が大きいほど有意に流産率が増加しました(p=0.006)。ただし、手術を施行しなくても78%の患者さんが出産できるということは重要なことです。

手術後の出産率を示した論文を表24に示します(文献24)。いずれも、手術をしない対照のない研究です。そこで私たちは全国多施設共同研究を行い、手術をした症例としなかった症例の出産率を調べました(文献25)。双角子宮の症例では形成手術の出産率75.0%(9/12)、しなかった症例の出産率85.7%(24/28)であり、手術のメリットはありませんでした。中隔子宮の症例では子宮鏡下中隔切除術をした場合86.5%(83/96)、しなかった場合69.2%(9/13)であり、手術のメリットがある傾向がありましたが、手術をしない患者さんが少なく、はっきりした結果は得られませんでした。
一方、Rikkenらは、248例の1回以上流産歴のある中隔子宮を持つ女性の次回妊娠帰結を調べ、中隔切除群では51%(76/148)、非手術群では71%(71/100)の出産率であり、出産率は改善せず、流産率、早産率も減少させなかったと報告しました(第35回ESHRE学術会議,2019年6月24日ウィーン)。
欧米で無作為割り付け試験が行われていますが、まだ結果は得られていません。手術は今のところ慎重に考えるべきと思います。

表23:中隔子宮と双角子宮を持つ夫婦の手術を行わない場合の出産率

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出産率 累積出産率
  子宮奇形 正常子宮 p 子宮奇形 正常子宮 p
  42 1528   41 1528  
1st 59.5%
(25/42)
71.7%
(1096/1528)
0.084 61.0% (25) 71.7% (1096) 0.133
2nd 55.6% (5/9) 60.4% (166/275) 0.772 73.2% (30) 82.6% (1262) 0.119
3rd 100% (2/2) 55.0% (38/69) 0.207 78.0% (32) 85.1% (1300) 0.215
4th   22.2% (4/18)     85.3% (1304)  
5th   33.3% (3/9)     85.5% (1307)  
6th   0% (0/6)     85.5% (1307)  
Final       78.0% (32) 85.5% (1307)  

Sugiura-Ogasawara et al. F&S 2010

表24:子宮奇形に対する手術をした場合の出産率

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  手術あり 手術なし
  Makino et al. 1992 Candiani et al. 1990 Ayhan et al. 1992 DeCherney et al. 1986 Daly et al. 1989 Lee et al. 2000 Kormanyos et al. 2006 Sugiura-Ogasawara et al. 2010 Ghi et al. 2012
患者数 71 144 89 103 55 40 94 42 24
子宮奇形の種類 弓状子宮
中隔子宮
73中隔子宮
71双角子宮
49中隔子宮
40双角子宮
中隔子宮 中隔子宮 中隔子宮 中隔子宮 中隔子宮
双角子宮
中隔子宮
術式 Abdominal Tompkins, Jones, Te Linde, Strassman Tompkins, Jones, Strassman Resectoscope Scissors Resectoscope Resectoscope - -
適応 反復流産 102 反復流産
42 不妊症
反復流産
早産
反復流産 反復流産
早産
28反復流産など
10 不妊症
反復流産 反復流産 最初の妊娠
出産率/妊娠 84.8%
(39/46)
中隔子宮
68% (45/66)
双角子宮
76% (50/66)
中隔子宮
65% (30/46)
双角子宮
83% (45/54)
80%
(63/72)
切除が成功した場合
80%
(60/75)
77.3%
(17/22)
68.8%
(33/48)
累積71.8%
(51/71)
出産率 54.9% 65.9% 61.2% 64.3% 35.1%
累積
54.3%
59.5%
(25/42)
累積
78.0%
(32/41)
33.3%
(8/24)

Sugiura-Ogasawara et al.
Cur Opin Obstet Gynecol 2013

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